小説(14)いつもの月曜日と同じであった。朝9時半、社員はそれぞれの持ち場でいつもと同じ朝をはじめた。会社は、江頭の好みで、社内いたるところにラジカセがあり、FMが流れ続けていた。経理のキャビネットの上にもラジオがある。松田はもともと ながらで仕事をするタイプではないが、音楽が流れていると、けっこう気分をソフトな気持ちにしてくれる。しかし、松田は、そしておそらく全社員も同様に、午後1時半からの深田との団交がどういう展開になるのか、そのことを表立って口にはしないが、深田の考えで作られたリフレッシュスペースで、社員が二人集まると、団交の話でになった。社員の気持ちとしては、深田には江頭との関係を絶って、仕事に真向取り組んでほしいというところであった。なぜなら、社員の気持ちとして、経営手腕は買っていたからである。 その団交の時間。まず、安藤、赤城、安川が会議室にはいっていき、ドアがしめられた。会議室にはいる間際、赤城がドアの中心にあるプレートを会議中にかえた。おくれて、深田がはいった。 なかなか出てこない団交の結果が、どうなるか気が気でなかった。途中、赤城がでてきたが、デスクにある電卓を手にとるとすぐにまた会議室に戻っていった。 「どんな感じですか?」と声をかけたが、答えることなく、無表情のまま会議室に消えていった。 結局、団交が終わったのは4時半。3時間におよんだことになる。出てくると深田は社長室のドアをしめ、しばらくすると、いつものような大きな声でなく、電話でどこかへ電話をしているのが、松田の机の上のビジネスホンのランプでわかった。また、安藤、赤城、安川の三人は会社から出ていった。外出掲示板にはなにも書いていかなかったが、どうも外で打ち合わせをするらしかった。しかし、どうして外なんだ?松田はそのとき素朴な疑問をもった。 5時になってようやく2人が帰ってきた。安藤の姿はなかった。 「松田さん、このまえのところ今日空いてるかどうか確認してください」 赤城が手元の書類を整理しながら言った。 「団交の結果報告ですね」 「そう」 「どうなったんですか?」 「あとでね」 赤城の表情からは その結果はわからないし、読み取れなかった。 しかし、安藤は6時近くになっても帰ってこなかった。 どうしたのか? ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|